訪問看護でできることを書いてきましたが、今日はできないことを書きます。

正直に書いておきたいと思って。

週1〜2回しか会えない

訪問看護は、週に1〜3回が多いです。残りの5〜6日間は、基本的に一人です。

「何かあったらすぐ来てほしい」という気持ちはわかります。でも、それはできません。24時間365日対応できるわけではない。

一人暮らしの方への支援の難しさは、一人暮らしで精神疾患にも書きました。

「治す」ことはできない

訪問看護師は医師ではないので、診断も処方もできません。病気を「治す」ことはできない。

できるのは、状態を「見続けること」「記録し続けること」「主治医に伝えること」。地味で、目に見えにくい仕事です。

関係が「終わる」こともある

引っ越し、死亡、本人の意思による契約終了——訪問看護の関係は、いつか終わります。

「先生」「看護師さん」と呼ばれながら何年も関わってきた方との関係が終わるとき、喪失感があります。これも正直なことです。

それでも来続ける

できないことがたくさんあります。それでも、週に一度玄関に立つことに意味があると思っています。

「来てくれる人がいる」という事実が、誰かの安全網になっていると信じているから。

「週1〜2回しか会えない」という現実

精神科訪問看護師として、「もっと頻繁に来てほしい」という声をいただくことがあります。週1〜2回の訪問では、残りの5〜6日間を一人で過ごすことになります。その間に何が起きても、すぐには対応できない。「毎日来てほしい」という気持ちは、十分に理解できます。

でも現実として、毎日訪問することは、制度的にも人員的にも難しいことが多い。「できないこと」を正直に伝えることが、「できること」をより大切にするためにも必要だと思っています。

Xさん(52歳)は「週2回が待ち遠しすぎる。来てくれない5日間が長い」と言っていました。「来てくれない5日間に何かあったら、どうすればいいか」と聞くと、「わからない」と言いました。「わからない」を「わかる」にすることが、次の課題でした。「5日間を一人で乗り越えるための方法」を一緒に考えることが、週2回の訪問の中でできることのひとつです。

「危機のとき、すぐ来られない」ということ

精神科訪問看護で「できないこと」のひとつが、「危機のとき24時間対応できないこと」です。夜中に「消えてしまいたい」という気持ちが出てきたとき、訪問看護師に電話できても、すぐに来ることはできないことがほとんどです。

そのため、「危機のときの連絡先リスト」を作ることを大切にしています。「まず訪問看護師の事業所に電話する、夜間・休日は相談支援センターや精神科救急に電話する、どうしても辛いときは救急を呼んでいい」という具体的な選択肢を、一緒に確認しておく。「何かあったときどうするか」を事前に決めておくことで、「一人で抱える時間」を短くできます。

Yさん(46歳)は「夜中に電話していいですか」と聞いてきました。「事業所の緊急電話番号に電話してください、夜中でも繋がります」と伝えました。「夜中に電話していいとわかった」というだけで、「少し安心した」と言っていました。「使えるかどうか」より「使えることを知っている」ことの安心があります。

「できないこと」を伝えることで「できること」が見えてくる

「できないこと」を正直に伝えることは、「できること」をより具体的にする機会でもあります。「毎日来られないから、代わりに何ができるか」「危機のとき来られないから、事前に何を準備できるか」——「できない」から始まって、「ではどうするか」が生まれます。

精神科訪問看護は万能ではありません。全てに対応することはできないし、全てを解決することもできない。でも「できることの中で、最善を尽くす」という姿勢と、「できないことを正直に伝える誠実さ」を持って関わることが、長期的な信頼につながります。「できることとできないことを、はっきり言ってくれる人」として信頼されることが、この仕事の目標のひとつです。

「なんでもしてくれる」という誤解

精神科訪問看護に来ると、「なんでもやってもらえる」と思っている方がいます。家の掃除、買い物、料理、ゴミ出し——それらを期待して「来てほしい」と言う。そのたびに私は「それは訪問看護の仕事ではないんです」と伝えなければなりません。

これは冷たいことを言っているわけではありません。訪問看護には「看護」という明確な役割があり、家事援助は訪問介護や生活支援ヘルパーの仕事です。混同すると、本来その人に必要なサービスが届かなくなります。

Xさんが「できないこと」を求めてきたとき

Xさん、52歳。長年のうつ病で自宅に引きこもり気味でした。訪問を重ねるうちに信頼関係ができてきたころ、Xさんが言いました。「台所の片付けを一緒にしてほしい。坂本さんがいると動ける気がするから」。

気持ちはわかりました。Xさんにとって、誰かがいることで動ける感覚は本物でした。でも私が毎週台所を片付けることは、看護の仕事ではありません。それにもし私がやり続ければ、Xさん自身が「自分でできる」という経験を積む機会を奪います。

私はXさんに言いました。「台所を一緒に見ることはできます。でも片付け作業は私の仕事の範囲外です。生活支援ヘルパーさんに入ってもらう方法があります、一緒に考えましょう」。Xさんは少し不満そうでした。でも説明すると「そういうことなんですね」と理解してくれました。

その後、ヘルパーさんが週一回入るようになりました。Xさんはヘルパーさんとも良い関係になって、私の訪問日には「この前ヘルパーさんと一緒にここまで片付けた」と嬉しそうに見せてくれます。できないことを断ることで、より適切なサポートにつながりました。

Yさんが「感情的な支え」を求めてきたとき

Yさん、46歳。境界性パーソナリティ障害の傾向がある方で、感情の揺れが激しく、「いつでも電話していい」という関係を求めてくることがありました。「夜中に不安になったら電話していいですか」という質問には、正直に答えなければなりません。

訪問看護師への直接の夜間電話は、私個人の携帯番号を渡すことを意味します。それは事業所のルールとして認めていません。代わりに、相談窓口の番号(精神科救急相談窓口など)を伝え、緊急時の対応フローを一緒に整理しました。

Yさんは最初「冷たい」と言いました。でも私は続けました。「私があなたの夜中の電話を受けることで、日中の訪問の質が落ちてしまうことがある。それはYさんのためにならない。だから私は昼間に全力を注ぎます」と。

Yさんはその後も何度か同じことを言いましたが、少しずつ「訪問看護師にできることとできないことがある」ということを理解してくれるようになりました。できないことを明確にすることが、信頼を壊すのではなく、むしろ関係を長続きさせることもある。

精神科訪問看護にできないことがあるのは、怠慢ではなく役割の明確さです。できることに集中するために、できないことをはっきりさせる。XさんとYさんが、そのことを教えてくれました。今日もできることに全力を注いで、訪問に行きます。

できないことを伝える「技術」

「できません」と言うことは、簡単なようで難しい。信頼関係ができてきた利用者さんから頼まれたことを断るとき、「冷たい人だと思われるかもしれない」という気持ちが出てきます。でも、できないことを「できます」と引き受けると、長期的に見て関係が歪んでいきます。

できないことを伝えるときに大切なのは、「なぜできないか」を丁寧に説明することです。「規則だからできません」ではなく、「私が担当できる役割の範囲外です。でも代わりにこういう方法があります」という伝え方。そこに代替案があれば、断られた側も受け取りやすくなります。

限界を知ることが、より良い支援につながる

訪問看護師個人が「なんでも引き受ける」ようになると、燃え尽きます。私自身、10年以上続けてきた中で「もうできない」と感じた時期がありました。そのとき、先輩の看護師に言われた言葉があります。「坂本さんが倒れたら、担当している利用者さんはどうなりますか」。

利用者さんのために自分を犠牲にすることは、長い目で見ると利用者さんのためになりません。できることとできないことを明確にして、自分のリソースを持続可能な形で使い続けること——それが本当の意味での支援です。XさんもYさんも、私がそのことを再確認するきっかけをくれました。

今日もいくつかの訪問があります。できることに全力を注ぎ、できないことは正直に伝え、代わりの方法を一緒に探す。それが私の仕事のやり方です。この仕事を長く続けるために、この姿勢を保ち続けます。

「境界線を引く」ことが支援の質を保つ

訪問看護師としての「境界線」は、自分を守るためだけにあるのではありません。利用者さんとの関係を健全に保つために必要なものです。境界線のない関係は、最初は「親切」に見えますが、長期的に見ると依存関係を生みやすく、利用者さんの自立を妨げることがあります。

Xさんが「台所を一緒に片付けてほしい」と言ったとき、私がそれを引き受け続けていたら、Xさんは「誰かがいれば動ける」という状態のまま止まっていたかもしれません。ヘルパーさんと一緒に動く経験を積むことで、Xさんは「自分にもできる」という感覚を少しずつ育てていった。それは私が「できません」と言ったからこそ生まれた経路です。

Yさんが夜中の電話を求めたとき、私がそれを引き受けていたら、Yさんの「夜中の不安を誰かに電話で解消してもらう」というパターンが強化されていたかもしれません。代わりに相談窓口を活用する練習をすることで、「自分で使える資源がある」という経験になっていきました。

できないことを明確にしながらも、代替案を提示し続けること。それが精神科訪問看護師として、利用者さんの自立を支える方法です。今日も、できることに全力を注ぎながら、できないことは正直に伝えます。

精神科訪問看護にできないことを知ることは、「できること」に集中する力になります。家事をしないからこそ、精神状態の観察に全力を注げる。夜中の電話を受けないからこそ、昼間の訪問に質の高い関わりができる。できないことの明確さが、できることの深さを作ります。XさんとYさんがそのことを体で教えてくれました。今日もできることに全力で、訪問に行きます。

「できません」と言える看護師でいること。それが、長くこの仕事を続けるための条件の一つだと思っています。

訪問看護師として「できないこと」を伝えるたびに、「冷たく思われていないか」と気になることがあります。でも、Xさんがヘルパーさんと片付けた結果を嬉しそうに見せてくれた日、Yさんが相談窓口を自分で使えたと報告してくれた日——そのたびに「できません」と言ったことが正解だったと確認できます。できないことを断ることが、その人の自立への道を開くことがある。その経験を、今日も持ち続けて訪問に行きます。

今日もできることに全力で。そして、できないことは正直に。それが私の仕事のやり方です。

訪問看護師として「できないこと」を伝えるたびに、「冷たく思われていないか」と気になることがあります。でも、Xさんがヘルパーさんと片付けた結果を嬉しそうに見せてくれた日、Yさんが相談窓口を自分で使えたと報告してくれた日——そのたびに「できません」と言ったことが正解だったと確認できます。できないことを断ることが、その人の自立への道を開くことがある。その経験を、今日も持ち続けて訪問に行きます。

今日もできることに全力で。そして、できないことは正直に。それが私の仕事のやり方です。

「できません」と言える看護師であり続けること。XさんとYさんが教えてくれた大切な姿勢です。できることに集中し、できないことを明確にし、代わりの道を一緒に探す——その繰り返しが、長く続けられる支援をつくります。今日もその姿勢で訪問に向かいます。

精神科訪問看護にできないことを知ることで、できることがより深くなります。XさんとYさんが教えてくれたこの視点を、これからも大切にします。


坂本なつ(精神科訪問看護師・12年)

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