「訪問看護ってお金がかかりますよね」と聞かれることがよくあります。

結論から言うと、使える制度によっては、思っているより安く利用できます。

精神科訪問看護は「医療保険」が使える

精神科訪問看護は、医療保険(健康保険)が適用されます。介護保険が使えない年齢の方や、要介護認定を受けていない方でも利用できます。

自己負担は通常1〜3割です。

自立支援医療でさらに安くなる

精神疾患で通院している方の多くが利用している「自立支援医療(精神通院)」という制度があります。

この制度を使うと、医療費の自己負担が原則1割になります。さらに所得に応じた上限額が設定されるため、月の医療費が一定額を超えないようになります。

精神科訪問看護もこの制度の対象です。つまり、自立支援医療を使っている方は、訪問看護の自己負担も1割以下になる場合があります。

実際の目安

例えば、週1回・60分の訪問看護を利用した場合(月4回):

  • 3割負担の場合:月あたり約6,000〜9,000円程度
  • 自立支援医療(1割)の場合:月あたり約2,000〜3,000円程度
  • 所得が低い場合:上限額制度でさらに低くなる場合あり

※金額は目安です。加算や地域によって異なります。

利用の流れ

  • ①主治医に相談:「訪問看護を利用したい」と伝える
  • ②訪問看護指示書を発行してもらう:主治医が指示書を書いてくれる
  • ③訪問看護ステーションに連絡:指示書を持って契約・利用開始

「うちの家族は使えるの?」と思ったら、まず主治医か地域の訪問看護ステーションに電話で相談するのが一番早いです。

訪問看護で実際に何をするかは、精神科訪問看護とは何かにまとめています。

実際の自己負担額——具体的な例

「週1回訪問して、月にいくらかかるか」を具体的に見てみましょう。精神科訪問看護の費用は、利用する制度と利用者の収入によって変わります。

医療保険(健康保険)を使った場合、訪問看護基本療養費は1回あたり約5,000〜8,000円程度(保険適用前の額)です。自己負担1割の方なら500〜800円/回、3割の方なら1,500〜2,400円/回程度が目安になります。週1回・月4回訪問した場合、1割負担で月2,000〜3,200円程度です。

さらに「自立支援医療(精神通院医療)」を使っている方は、自己負担が原則1割になり、さらに所得に応じた上限額が設定されます。市区町村民税が非課税の方は月額上限2,500円、課税額が一定以下の方は月額上限5,000円となり、訪問看護を週複数回使っても上限を超える支払いは発生しません。

障害福祉サービスを使う場合

障害者手帳を持っている方や、障害支援区分の認定を受けている方は、「障害福祉サービス(居宅介護・重度訪問介護など)」を使うことができます。この場合も、自己負担は原則1割で、所得に応じた月額上限が設定されます。

「医療保険の訪問看護」と「障害福祉サービス」は、目的や内容が異なるため、両方を組み合わせて使うこともできます。例えば、週2回は訪問看護師が医療的なケアとして訪問し、それ以外の日は生活援助のヘルパーさんに来てもらう、という使い方が可能です。

どの制度を使えるか、どのくらいの費用になるかは、主治医や訪問看護ステーション、市区町村の障害福祉窓口に相談することで確認できます。「費用が心配で使えない」という方にこそ、まず相談してほしいと思っています。

利用する人の声——「思ったより安かった」

私が担当する利用者さんの中にも、「訪問看護は高そうだから使えないと思っていた」と言っていた方が複数いました。

Jさん(73歳)は年金生活で、自立支援医療を適用していたため、月の自己負担上限が2,500円でした。「週1回来てもらって2,500円で済んだ。それより外来のタクシー代の方が高かった」と笑っていました。通院の手間と費用を考えると、訪問看護の方がコスト的にも合理的という場合もあります。

Iさん(57歳)は住民税非課税世帯で、上限額が2,500円。「書類の読み方がわからないことを毎回聞けるのに2,500円。それは安い」とおっしゃっていました。医療的なケアだけではなく、生活全般のちょっとした困りごとを聞いてもらえることへの価値を感じてもらえている例です。

費用以外の「壁」について

費用よりも大きな壁になるのが、「申請の手続き」です。自立支援医療の申請、訪問看護指示書の取得、市区町村への届け出——これらをひとりでこなすのは、精神疾患の方にとって非常に負担が大きいことがあります。

そういうときに力になるのが、精神科ソーシャルワーカー(PSW)や相談支援専門員です。手続きの窓口になってくれて、必要な書類を一緒に揃えてくれます。「まずどこに相談すればいいかわからない」という場合は、通院しているクリニックや病院の相談窓口、または市区町村の障害福祉窓口に問い合わせてみてください。

費用面の不安を解消することが、「使ってみる」への第一歩になります。利用してみて初めてわかることが、精神科訪問看護にはたくさんあります。まず一歩、問い合わせてみてほしいと思っています。

「申請が難しくて諦めた」という声に答えたい

精神科訪問看護を使いたいと思っても、「申請が複雑そう」「書類が多くて無理」という理由で諦めてしまう方がいます。実際、自立支援医療の申請には診断書や申請書類が必要で、市区町村の窓口に出向く必要があります。精神疾患があって外出が難しい状態の方にとっては、その手続き自体が「ハードル」になることがあります。

そのハードルを越えるためのサポートをしてくれる人が、精神保健福祉士(PSW)です。病院やクリニックに配置されていることが多く、「申請手続きを一緒にやってほしい」と相談できます。訪問看護ステーションにもPSWがいる場合があり、サービス開始前の手続きを一緒に進めてくれることがあります。

「相談支援専門員」も、手続きサポートの窓口になります。市区町村に登録された相談支援事業所に在籍しており、障害福祉サービスの申請や計画作成を支援してくれます。「どこに相談すればいいかわからない」という場合は、市区町村の障害福祉窓口に「相談支援専門員を紹介してほしい」と伝えるのが最初のステップです。

週何回来てもらえるか——訪問回数と費用の関係

精神科訪問看護は、週1〜3回程度が一般的です。医師の指示によっては週4回以上の「精神科重症患者早期集中支援管理料」の対象になる場合もあります。状態が不安定な時期や退院直後などは、回数を増やすことで在宅生活を安定させることができます。

「週3回来てもらったら費用が3倍になるのでは」と心配される方がいますが、自立支援医療を適用している場合は月額の上限が設定されているため、週3回でも月2,500円〜5,000円の範囲に収まることがほとんどです。回数が増えても、上限額を超えない限り費用は変わりません。

Iさん(57歳)は退院後の3ヶ月間、週3回の訪問を受けていました。「3回来てもらったのに、費用はいつもと変わらなかった」と驚いていました。「もっと早く知っていれば、入院しなくても済んだかもしれない」と言っていました。費用への不安が、利用を遠ざけているケースは実は多いのです。

訪問看護と外来診察の違いを理解すること

訪問看護は医師の外来診察とは別のサービスです。「外来に行っているから訪問看護は要らない」という誤解がありますが、外来は「月に1〜2回、15〜30分」が一般的な診察時間です。それだけでは見えない部分を補うのが訪問看護の役割です。

「先生には言いにくいことを、訪問看護師には言える」という利用者さんの言葉を何度も聞いてきました。外来は「症状の確認・薬の調整」が中心になりがちですが、訪問では「日常の困りごと」「家族との関係」「お金の不安」など、生活全体について話せます。その情報を主治医に伝える橋渡しをするのも、訪問看護師の仕事です。

費用に関してもうひとつ大事なことがあります。入院には1日あたり数千円〜数万円の費用がかかります。訪問看護を使って在宅での安定を保つことは、長い目で見たときに「入院を減らす」効果があり、トータルの医療費を下げることにもつながります。「月2,500円の訪問看護で入院を1回減らせるなら、コスト的にも明らかに合理的」という視点で考えてほしいと思っています。

まず一度、問い合わせてみること

精神科訪問看護の費用について、「思ったより安い」「使えそう」と感じた方は、まず主治医に「訪問看護を使いたい」と伝えてみてください。主治医が訪問看護指示書を出してくれれば、あとは訪問看護ステーションが手続きを案内してくれます。

「自分は対象になるか」「費用がどのくらいかかるか」を事前に確認したい場合は、地域の訪問看護ステーションに電話で問い合わせることもできます。「まず話だけ聞きたい」という問い合わせも歓迎しているステーションがほとんどです。使うかどうかを決める前に、話を聞いてみることから始めてほしいと思います。

制度を使うことへの心理的ハードル

費用面の不安が解消されたとしても、「訪問看護を使う」ことへの心理的なハードルを感じる方がいます。「看護師さんに来てもらうのは大げさ」「自分はそこまで重くない」「他の人の方が困っているから自分が使ってはいけない」という気持ちです。

でも訪問看護は、「重症の人だけが使うもの」ではありません。「通院と通院の間に不安がある」「服薬の管理に不安がある」「一人暮らしで生活リズムが乱れやすい」——そういったニーズにも対応しています。「大変になってから使う」より「日常的な安定を維持するために使う」という考え方で利用している方も多い。

「使うことへの罪悪感」を持つ方に私がよく言うのは、「あなたが安定して生活できることが、周りへの一番の貢献です」という言葉です。訪問看護を使って安定することで、家族への負担が減り、入院を避けられ、社会参加が広がる。それは本人だけでなく、周りへのメリットにもなります。ぜひ遠慮せずに使ってほしいと思っています。

費用のこと、制度のこと、どこに相談すればいいかわからないこと——どんな小さな疑問でも、まず聞いてみてください。「電話一本で聞いてみる」という一歩が、生活を変えることがあります。

精神科訪問看護の費用について、「知らなかった」という声をよく聞きます。「もっと早く知っていれば」「使えると思っていなかった」という言葉も。制度の情報は、必要な人に届きにくいことがあります。この記事が、「使えるかもしれない」という気づきにつながれば、それだけで意味があります。費用の心配を抱えている方は、まず主治医か訪問看護ステーションに相談してみてください。「自分には関係ない」と思っていた制度が、実は使えることが多いです。一歩踏み出すことが、生活を変えることがあります。

精神科訪問看護の費用は、制度を使うことで思ったよりずっと抑えられます。「高そう」「自分には使えない」という思い込みが、必要な支援を遠ざけていることがある。Jさんが「訪問看護を知っていてよかった」と言ってくれた言葉を、今も覚えています。費用の壁を越えた先に、毎週来てくれる人がいる安心があります。その安心が、生活を安定させていきます。「まず一度聞いてみる」という一歩を、ぜひ踏み出してほしいと思っています。

「知っていれば使えた」という言葉をなくすために、費用のことを正確に伝えることも、訪問看護師の大切な仕事だと思っています。使えるはずの制度が使われないまま、必要な人が支援を受けられずにいる状況は変えていきたい。この記事が、その一歩になれば嬉しいです。

制度を知ることが、生活を守ります。精神科訪問看護の費用について疑問があれば、いつでも訪問看護ステーションや主治医に相談してください。「使えるかもしれない」という一問い合わせが、生活を変えることがあります。

費用の壁を越えた先に、安心があります。ひとりで抱えないで、まず聞いてみてください。

費用のことを知ることが、支援への第一歩です。まず一度、問い合わせてみてください。

あなたの生活を守るために、制度はあります。ぜひ使ってください。

知ること、使うこと、続けること。それが支援です。


坂本なつ(精神科訪問看護師・12年)

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