双極性障害(双極症)の家族と暮らすとき、家族がいちばん戸惑うのは、本人の状態が時期によってまったく違って見えるところ。同じ人が「眠らずに動き続ける時期」と「布団から出られない時期」を行き来する。本稿は、躁状態と抑うつ状態を分けて、家族の関わり方の整理を組み立てる。

この記事で整理できること

  • 躁・軽躁・抑うつ・寛解の4つの状態を家族が見分けるポイント
  • 躁状態(軽躁含む)で家族が抱える特有のリスクと対応
  • 抑うつ状態の声かけと、急かさない関わり方
  • 状態が切り替わる前のサイン(睡眠・口数・浪費)
  • 家族が一喜一憂しないための長期視点

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まず分ける ─ 双極性障害の4つの状態

双極性障害は、状態を4つに分けて見ると整理が早くなる。

  • 躁状態:気分が極端に高揚し、睡眠時間が大幅に減り、口数・行動・買い物が増える時期。本人の現実検討が下がっているサインが出る
  • 軽躁状態:躁ほど明確ではないが「いつもよりずっと元気で活動的」な時期。仕事や創作のパフォーマンスが上がって見えるため、家族が見過ごしやすい
  • 抑うつ状態:気分の落ち込み、意欲の低下、睡眠と食事の乱れ。うつ病とは経過が違うが、家族から見える症状は似る
  • 寛解期:症状が落ち着き、本人が日常を取り戻している時期。服薬の継続が再発予防につながることが多い

家族の関わり方は、状態によって変える。一律の対応は通じない。

躁状態・軽躁状態への対応

家族にとって難しいのは、本人が「絶好調」と感じている時期に、家族の側が異変を察知しなければいけないこと。本人は自覚しにくく、家族の制止を「邪魔されている」と受け取りやすい。

家族が気づきやすいサイン

  • 睡眠時間が極端に減っている(3〜4時間で平気そう)
  • 口数が普段の2倍以上、話の切り替えが早い
  • 大きな買い物・契約・投資を急に始める
  • 仕事や創作に夜通し没頭する
  • 急に交友関係が広がる、SNSの投稿が増える
  • 怒りっぽくなる、些細なことで衝突する

家族がやれること

  • 主治医がいれば、家族から連絡する:本人が受診時に「絶好調」と話しても、家族側からの情報があると医師が状態を把握しやすい
  • 大きな契約・買い物にブレーキをかける仕組み:家族間で口座管理を見直す、クレジットカードの利用上限を本人と一緒に下げる、新しい契約は1週間置いてから決めるルールを置く
  • 睡眠の確保を優先課題にする:眠れていない期間が長くなると、状態がさらに悪化しやすい
  • 本人と議論しない:「いま躁状態だよ」と本人に伝えても受け入れにくい。客観的な事実(睡眠時間・支出)だけ短く伝える

抑うつ状態への対応

双極性障害の抑うつ状態は、うつ病の抑うつと家族からは見分けにくいが、対応の基本は重なる部分が多い。

  • 「頑張れ」「早く起きたら」と急かさない
  • 本人の興味のある話題に短く乗る
  • 家族側が一喜一憂しない(数日で「やっとよくなった」「またひどくなった」と評価しない)
  • 本人が自殺念慮を口にしたら、本記事冒頭の 「死にたい」と家族に言われたとき今夜やる3つの整理 に切り替える

うつの家族向け対応の詳細は うつ病の家族との接し方|整理する3つの視点 も参考になる。

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家族が観察した状態の変化を1〜2行で記録する欄付き。受診時に医師に渡せる素材になる。

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状態が切り替わる前のサインを家族側で持つ

双極性障害の経過では、状態が切り替わる数日前から「いつもと違う」サインが出ることがある。本人より家族の方が先に気づくことが多い。

  • 睡眠の変化:寝つきが悪くなる/起床時間が極端に早くなる/逆に寝てばかりになる
  • 口数の変化:話が早口になる/逆にほとんど話さなくなる
  • 支出の変化:通販・外食・買い物が急に増える/逆に食事を抜くようになる
  • 表情の変化:いつもより活気がある/表情が乏しくなる
  • 外出の変化:夜中に出かける/一切外に出なくなる

これらを家族が記録(週2〜3回、1〜2行)しておくと、状態の波が見えてくる。受診時に医師と共有できる。

家族が一喜一憂しない長期視点

双極性障害は、月単位ではなく年単位で経過を見る。家族が本人の調子に振り回されると、家族の生活が止まる。

  • 1か月の変動で「治った」「悪化した」と判断しない
  • 家族側の予定(仕事・人間関係・趣味)を本人の調子に全部合わせない
  • 家族会・訪問看護・主治医との連携を、状態が落ち着いている時期にこそ整える
  • 服薬の継続が再発予防につながることが多いので、家族は「飲ませる役」を抱え込まず、仕組み(カレンダー・訪問看護・LAI)で分散する

やってはいけない対応

  • 躁状態の本人に「落ち着いて」と繰り返す:本人にとって攻撃に感じられる
  • 本人が「絶好調」と言う時期を家族も信じる:軽躁の可能性を見逃す
  • 抑うつ期に「あの躁状態の時のように動けば」と過去と比較する:本人を苦しめる
  • 家族が一人で薬の管理を全部担う:家族が消耗する
  • 本人の前で「あの時の躁状態ひどかった」と回顧する:本人の自尊心が削れる
  • 状態が落ち着いた時期に薬をやめさせる:薬の継続は主治医との相談で決まる領域

相談先・制度

  • 地域の保健所(精神保健福祉相談)
  • 精神保健福祉センター(家族だけでも相談可)
  • 家族会(NPO 全国精神保健福祉会連合会・みんなねっと)
  • 本人の主治医・精神科病院の地域連携室
  • 訪問看護ステーション(精神科対応)
  • 緊急時:110番/119番/地域の精神科救急情報センター
  • いのちの電話:0120-783-556 / よりそいホットライン:0120-279-338(24時間)

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整理し直すと

  • 双極性障害は「躁/軽躁/抑うつ/寛解」の4状態に分けて見る
  • 躁・軽躁では、睡眠時間・支出・口数の変化を家族側のサインとして持つ
  • 抑うつ期は急かさず、うつ病の家族と同じ接し方の基本に沿う
  • 状態の切り替わりは家族の方が先に気づきやすい。週2〜3回の1〜2行記録を続ける
  • 1か月の変動で評価せず、年単位で経過を見る。家族が一喜一憂しない

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※この記事についての注意

本記事は、精神科の診断・治療・薬の判断を提供するものではありません。本人の症状の評価や対応の判断が必要な場合は、主治医・かかりつけ医・各地域の精神保健福祉センター・保健所に直接ご相談ください。

本人または家族の身に危険が及ぶ恐れがある場合は、110番・119番・お住まいの地域の精神科救急情報センター・いのちの電話・よりそいホットラインをご利用ください。

記載している支援機関の情報は2026年5月時点のものです。最新情報は厚生労働省・各自治体の公式サイトでご確認ください。

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