※本人に自傷・自殺の具体的な準備(道具を集める/遺書を残す/睡眠薬を多量に手元に置く)が見える、または身に危険が今あると感じる場合は、本記事を読み進める前に110番または119番へ連絡してください。本記事は、本人が「死にたい」と口にしたあとの数日〜数週間を、家族が抱え込まないように整えるための整理です。
家族から「死にたい」と言われた瞬間、家族の頭は真っ白になることが多い。「どう返せばよかったのか」「あの言葉を聞いてしまった自分はどうすればいいのか」「明日また同じことが起きたら」── 同時にいくつもの問いが走るうちに、家族の側もしんどくなってくる。本稿は「死にたい」と家族に言われたあと、今夜・今週・今月の3つの時間軸で家族がやれることを並べ直す整理。
この記事で整理できること
- 「死にたい」と聞いた今夜、家族がやる3つの整理
- 「励ます」より先に必要な、本人の言葉を受け取る姿勢
- 家族が今夜・今週かけられる電話と窓口
- 翌日以降、本人と家族の生活を分けて考える視点
- 家族自身が抱え込まないための逃がし方
今夜やる3つの整理
「死にたい」と言われた直後の数時間は、家族の動きを次の3つに絞ると消耗が減る。
1. 本人の安全を見る(家の中で)
本人の身近に、自傷・自殺の道具になりうるもの(刃物、紐、医薬品の在庫、火気)が手の届く範囲にないかを家族が確認する。本人に気づかれないように、家族側だけで動く。声に出して問い詰めない。
2. 本人のそばに「いる」
本人に向かって長い言葉をかけなくていい。「励まそう」「言い返そう」「答えを出そう」とすると、家族の側が消耗してかえって硬くなる。今夜は、同じ部屋にいる、お茶を入れる、無言で隣にいるだけでよい。
3. 家族の手元に電話番号を置く
下記の番号を、玄関や冷蔵庫、家族のスマホの分かりやすい場所に控える。今すぐかける必要はない。「いざというときどこに電話できるか」が分かっているだけで、家族の心理的負担は変わる。
- 身体的な危険があるとき:110番/119番
- 夜間・休日の精神科対応:お住まいの地域の精神科救急情報センター(「(地域名)精神科救急情報センター」で検索)
- 24時間つながる電話相談:よりそいホットライン 0120-279-338(無料)
- いのちの電話:0120-783-556(曜日・時間帯で受付状況が変わるため公式サイトで確認)
「死にたい」を聞いた家族が陥りやすい3つの誤解
家族の側が抱えやすい誤解を、先に分けておく。
誤解1:本気じゃないかもしれない、と聞き流す
「本当に死ぬ気の人は言わない」という説を聞いたことがある家族は多い。これは誤りで、「死にたい」と口にする人の多くは、その時点で本気の苦しさを抱えている。聞き流さない。ただし、本人を問い詰めて確認する必要もない。聞いたという事実だけ家族の側で覚えておく。
誤解2:私が支えなければ、と全部抱える
家族の側が「私だけが支えなければ」と感じてしまうと、家族の生活が止まる。家族が倒れると本人の支援も止まる。「死にたい」と言われたあとほど、家族が一人で抱えない構造を作っておく。
誤解3:今すぐ正解の言葉を返さなければいけない
その場で完璧な言葉は要らない。「そう感じてるんだね」「しんどいね」と短く受け取るだけで十分。返事は1〜2文。長い励まし・説得・解決策の提示は、本人の苦しさを上書きすることがある。
明日以降の1週間で整える「家族の動線」
今夜を越えたあとは、1週間で家族側の動きを整える。本人を変えようとせず、家族側が動ける場所を作る。
1. 主治医がいれば連絡する
本人が通院中の場合は、家族から主治医(または精神科病院の連携室)に電話して状況を伝える。本人同席の有無、診察予約の前倒し、薬の調整について相談する。家族から主治医に伝えるとき、本人の同意は必須ではない(家族が知り得た情報を共有することは、医療と家族の連携として想定されている)。
2. 主治医がいない場合は、相談機関へ
本人がまだ受診していない場合は、地域の保健所(精神保健福祉相談)か精神保健福祉センターに家族だけで電話する。「家族が『死にたい』と言うようになった」と冒頭で伝える。受診先の紹介、家族の今後の動き方を一緒に整理してもらえる。窓口の使い分けは 本人を連れていけないとき家族だけで相談する方法 にまとめている。
3. 家族自身の睡眠と食事を守る
「死にたい」と聞いた家族の側も、確実に消耗する。家族の睡眠が3日以上削れると判断力が落ちる。一人で全時間を本人につきっきりにせず、家族間で交代する、外部の支援機関と一緒に抱える、という構えに早めに切り替える。
4. 「死にたい」の頻度・状況のメモ
本人が口にした日時、その前の数時間に何があったか、本人の表情・声のトーン、家族の対応を、1〜2行で記録しておく。受診や相談機関で話すときの素材になる。本人に見せる必要はない。
やってはいけない対応
- 「そんなこと言うなよ」と一蹴する:本人の感覚を否定する形になり、次から本人が口にしなくなる。口にしなくなる=抱え込みが深まる
- 「みんなしんどいんだから」と比較で押す:本人の苦しさを相対化して打ち消す形になる
- 本人を問い詰めて「本当に死ぬ気なのか」を確認する:家族が確認する役は重い。確認は医療者の領域
- 家族の中で本人の前で「あの子、死にたいって言ったの」と話す:本人にとっては「自分のいないところで決められている」感覚が残る
- 「死にたいと言うのは病気のせい」と本人に伝える:病気のラベルで処理されると、本人の苦しさが見過ごされた感覚になる
- SNSや知人に「うちの家族が…」と相談する:本人の情報が外に出ると、関係修復が難しくなる
家族が抱え込まないための逃がし方
「死にたい」を聞いた家族こそ、外部に話せる場所が必要になる。家族が一人で抱えると、家族の側が先に倒れる可能性が出てくる。
- 家族会:同じ立場の家族が集まる場。解決を目的にせず、話を聞いてもらうだけで張り詰めた部分がほぐれる
- 精神保健福祉センターの家族相談:継続的に家族の話を聞いてもらえる地域も多い
- 家族自身のカウンセリング・心療内科:家族の側が眠れない・食欲がない状態が続くなら、家族側も受診を検討する
- よりそいホットライン 0120-279-338(24時間無料):家族自身が話を聞いてもらいたい夜に
相談先・制度(再掲)
- 身体的な危険時:110番/119番
- 夜間・休日の精神科対応:地域の精神科救急情報センター
- 24時間電話相談:よりそいホットライン 0120-279-338
- いのちの電話:0120-783-556
- 地域の保健所(精神保健福祉相談)
- 精神保健福祉センター(家族だけでも相談可)
- 家族会(NPO 全国精神保健福祉会連合会・みんなねっと 等)
整理し直すと
- 今夜は3つだけ:本人の安全を見る/本人のそばにいる/家族の手元に電話番号を置く
- 「本気じゃないかも」「私だけが支えなければ」「正解の言葉を返さなければ」の3つの誤解に乗らない
- 明日以降、主治医・相談機関・家族自身の生活維持・記録を1週間かけて整える
- 家族自身も家族会・相談機関・電話相談で話を聞いてもらう場所を持つ
- 「死にたい」と言われたあとほど、家族が一人で抱えない構造を早く作る
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※この記事についての注意
本記事は、精神科の診断・治療・薬の判断を提供するものではありません。本人の症状や対応の判断が必要な場合は、主治医・かかりつけ医・各地域の精神保健福祉センター・保健所に直接ご相談ください。
本人または家族の身に危険が及ぶ恐れがある場合は、110番・119番・お住まいの地域の精神科救急情報センター・いのちの電話・よりそいホットラインをご利用ください。緊急時は本記事を読み進めるよりも、上記窓口への連絡を優先してください。
記載している支援機関の情報は2026年5月時点のものです。最新情報は厚生労働省・各自治体の公式サイトでご確認ください。