
家族の誰かが学校や仕事に行かなくなり、部屋から出てこない日が続く——多くの家族が「何が起きているのか」「何をしたらいいのか」分からずに過ごしています。引きこもりは、本人の問題であると同時に、家族全体の生活に影響する状況です。
この記事では、家族の引きこもりに向き合うときの4つの段階を整理します。「説得して外に出す」ことを目標にせず、本人と家族の両方が消耗せずに進める道筋を、公的支援の枠組みをもとに紹介します。
引きこもりとは何か:定義の整理
厚生労働省は、引きこもりを「家族以外の人との交流をほとんどせず、6ヶ月以上、家や自室にとどまる状態」と定義しています。期間が6ヶ月未満でも、本人や家族が困っている場合は支援の対象になります。
注意したいのは、引きこもりは「病気の名前ではない」ことです。背景には、うつ・不安障害・発達特性・身体疾患・家族関係の問題など、複数の要因が重なっていることが多く、一人ひとり違います。
そのため、まず「説得して外に出す」を目標にせず、「何が起きているかを整理する」ことから始めるのが現実的です。
段階1:家族の状況を整理する
本人を動かそうとする前に、まず家族側で次の項目を整理します。
- 本人の年齢、引きこもり始めた時期、きっかけ(いじめ・退職・家族の死など)
- 部屋から出る頻度、食事・入浴・通院の状況
- 本人が話せる相手(家族のうち誰か、友人、SNSなど)
- 本人の体調(持病・服薬・身体症状)
- 家族の経済状況(本人の収入・家族の収入・将来見通し)
これらは、後の相談時に必ず聞かれる項目です。一度書き出しておけば、複数の相談先で同じことを繰り返さずに済みます。
家族関係の整理も同時に
「家族の中で、誰が本人と一番話しているか」「逆に、誰が本人と関係がこじれているか」も整理しておきます。支援が動き出すとき、最初に動くのは「話せる関係の家族」になることが多いです。
段階2:本人ではなく、家族が先に相談する
本人が「相談に行きたい」と言うのを待っていると、何年も時間が過ぎてしまうことがあります。引きこもり支援の世界では、「家族が先に相談に行く」のが標準的なやり方です。
主な相談先
- ひきこもり地域支援センター:都道府県・指定都市にあり、家族からの相談を本人不在で受けてくれます。電話・メール相談から始められます。
- 精神保健福祉センター:各都道府県・指定都市に設置。家族会の紹介、専門医療機関への橋渡しもしてくれます。
- 市区町村の福祉課・基幹相談支援センター:生活支援・経済支援を含めた包括的な相談ができます。
- 家族会(KHJ全国ひきこもり家族会連合会など):同じ立場の家族同士で話せる場。地域支部があります。
初回は電話で十分です。「家族のことで相談したい」と伝えれば、担当者が話を聞いてくれます。費用はかかりません。
段階3:本人へのアプローチを設計する
家族側の準備が整ってから、本人へのアプローチを考えます。やってはいけない3つと、有効な3つをまとめます。
避けたいアプローチ
- 急に説得する:「いつまでこうしてるの」「いい加減外に出なさい」と急に詰めると、関係が悪化して話が一切できなくなることがあります。
- 無理に病院に連れて行く:本人の意思に反する受診は、その後の医療不信を生みやすく、長期化の原因になります。
- 家族会議で吊し上げる:複数人で囲んで「みんな心配してる」と伝えるのは、本人にとっては威圧になります。
有効なアプローチ
- 挨拶と日常の声かけだけ続ける:「おはよう」「ご飯ここに置いとくね」など、返事を求めない短い言葉を毎日。
- 本人の体調の変化を観察する:体の不調が出始めたタイミングが、医療につなぐ自然な入口になります。
- 家族が外で楽しそうにする:家族が消耗していると、本人も罪悪感で動けなくなります。家族自身の生活を立て直すことが、本人にも届きます。
段階4:長期化を見据えた経済・制度の整理
引きこもりが長期化したときに、家族が直面するのが「経済的な見通し」です。8050問題(80代の親が50代の引きこもりの子を支える状況)という言葉もよく聞かれます。
整理しておきたい項目
- 本人が利用できる可能性のある制度(障害年金・自立支援医療・生活保護)
- 親の老後資金と、本人を支え続ける場合の見通し
- 親が亡くなった後の本人の生活(兄弟姉妹との関係、成年後見など)
これらは、引きこもりがすぐに解消しなくても、家族として備えておくべきことです。市区町村の福祉課に相談すると、利用できる制度を整理してもらえます。
家族が消耗しないための3つのコツ
支援が長期化することを前提に、家族自身が消耗しないための工夫が必要です。
- 一人で抱え込まない:家族会で、同じ立場の人と話すと「自分だけじゃない」が分かります。
- 本人と一線を引く:「私の人生」と「本人の人生」を分けて考える時間を意識的に作ります。
- 定期的に専門家と話す:月1回でも、精神保健福祉センターやカウンセラーに話を聞いてもらう枠を作ると、視野が狭くなりません。
・よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
・いのちの電話:0570-783-556
・お住まいの精神保健福祉センター(自治体名 + 精神保健福祉センター で検索)
まとめ:引きこもりは「家族が先に動く」
- 本人を動かす前に、家族が状況を整理する
- 本人不在で、家族が先に相談に行ける(ひきこもり地域支援センター)
- 急な説得・強制受診は逆効果。日常の声かけを続ける
- 長期化に備えて、経済・制度の整理を並行で進める
- 家族自身が消耗しない仕組みを作る
整理シート(無料PDF)には、本人の状況・家族の状況・聞きたいこと・利用できる制度をまとめて書き込む欄があります。家族会議や、相談に行く前に、ぜひ使ってみてください。
この記事は、厚生労働省・自治体・精神保健福祉センター等の公的情報をもとに、こころログ編集部が一般の方に届く言葉で再構成しています。診断や治療判断を目的としたものではありません。具体的な症状や治療については、必ず医療機関にご相談ください。
※この記事についての注意
本記事は、精神科の診断・治療・薬の判断を提供するものではありません。症状や受診について判断が必要な場合は、主治医・かかりつけ医・各地域の精神保健福祉センター・保健所に直接ご相談ください。
本人または家族の身に危険が及ぶ恐れがある場合は、110番・119番・お住まいの地域の精神科救急情報センター・いのちの電話・よりそいホットラインをご利用ください。
記載している制度・支援機関の情報は2026年5月時点のものです。最新情報は厚生労働省・各自治体の公式サイトでご確認ください。

